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九月どすん

いつものように新聞を広げていたら「経年美化」の四文字が目に飛び込んできました。思わず身を乗り出し、記事に吸い寄せられました。というのも、ここ数年、わが身に「経年劣化」という言葉を意識することが増えてきました。鏡を見れば、シミとしわの目立つ顔、艶と量のない髪が嫌でも目に入ってきます。動くたびに「よっこらしょ」「あ痛たたた」は決まり文句。どこに置いたか、何を取りに来たか、探し物に費やす時間も増えました。何とか抗おうとちょっと高価な化粧品を使ったり、食生活を工夫したり、生活習慣を改善したりして努力はしているのですが、ちっとも効果は表れません。最近では開き直って「年を経ることによって手に入れる得もあるはず」と慰めては見るものの、深いしわの刻まれた土色に光る手よりやっぱり白くてやわらかな手でさすってもらう方が病だって早く治りそうだし、たくさんの苦労をして、それを乗り越えてきたからと言って必ずしも他人にも優しい素敵な人になれるとは限らない。やっぱり「経年」に続く二文字は「劣化」しかないのかと思っていたので、「経年美化」の四文字に期待が膨らみました。

しかし、そこに書かれていたのは、踏まれれば踏まれるほど色に深みが増し独特の風合いが生まれる「ペルシャ絨毯」と、使えば使うほど徐々に色落ちが楽しめる「岩手漆器」のことで人間のことではありませんでした。ちょっとがっかりはしたものの希望も見つけることができました。私も踏まれるような経験をいっぱい積み重ねてきたから今があり、体もずっと毎日休むことなく使い続けてきました。私なりの色の深まりと楽しい色落ちの「経年美化」はきっと始まっているにちがいない。そんな風に思えたのです。

(文責 坊守)