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九月どすん

ようやく夕方の風に秋の気配をわずかに感じることができるようになりましたが、今年の夏は、とりわけ暑かったように思います。連日防災無線から熱中症の危険をしらせる放送が流れるのを聞いていると、いつもはボーっとしている私でも、これはただ事ではないのだなと思わされました。そんな暑さの中、今年はスイカをいただく機会に恵まれました。スイカには暑さがよかったのか、どれもとても甘くてみずみずしくて、暑さを乗り切るパワーをいただきました。昔なら皮付きのまま口の周りに果汁を滴らせながら大口で食べましたが、今は上品に赤や黄色の果実の部分だけ切り取り、一口サイズに切り分けて冷蔵庫で冷やしていただきます。「この皮もったいないな」―ふと先日読んだ神戸新聞の「毎日のことこと」を思い出しました。これは、神戸の海を見下ろす部屋に住む文筆家で料理家の高山なおみさんのエッセイです。身の回りの自然のこと暮らしのこと料理のことなどをつぶやくように書かれた優しいお話です。月に二回掲載されるのを楽しみにしています。そこに「すいかの皮のサラダ」が紹介されていました。実を切り取った後の皮から、緑の固い部分だけを取り去り、小さく切って塩をかけてしばらくなじませたものでした。「これなら私にもできる」から、早速やってみました。すいかのほんのりとした甘さを塩が引き立て美味しい一品ができました。家族の評判も上々。口に入れたとき一瞬神戸の海風が吹いた気がしました(笑)スイカだけでなく、寺にはいろいろなお供えを届けていただきます。その一つ一つに「お念仏を絶やすことなく、引き継いでほしい」という願いが込められていることをいつも感じながら、有難く大切にいただいています。

(文責 坊守)