ホーム » どすん » 十二月どすん

十二月どすん

読み上げ

勝林寺の正面は、美術館や家老屋敷、お蕎麦屋さんが並び、観光駐車場につながる内町通りに面しており結構にぎやかです。そして、勝林寺の背面は、出石城址の前から続く小さな谷山川に面していて、時折高校生が通るくらいでわりと静かです。こちらには小さな畑や蔵、客間とそこから眺められるちょっとした庭があります。いずれも、以前は花や野菜を作ったり、苔を敷き詰めたりしていましたが、今ではすっかり愛犬カールの遊び場になっています(笑)先日、カールを遊ばせながら庭から川を見下ろすと、水の流れが止まっています。十一月には珍しく晴天が続いたせいなのか、五百メートルほど上流にある分岐点の柵に落ち葉が溜まったのか・・。わずかに残った水たまりに小魚が集まっています。さらに、川の落差を利用してつくられた小さな魚道で時折「ごぼごぼっ」と水を吐くような音がします。よく見ると、オオサンショウウオの頭が石の下から見え隠れします。以前から石の下を住み家にしているのですが、水が少なくなり困っているようです。このままではみんな死んでしまう・・すぐに住職に頼んで、上流の堰を少し開けてきてもらいました。待つこと一時間、間に合いました。小魚は泳ぎ、オオサンショウウオは水で満たされた住み家に戻り、静かな川になりました。またある時は、モクズガニが石の隙間で出入りを繰り返しているのに気がつきました。じっと見ていると、石の下の小石を一つずつ運び出し、住み家の増設をしているみたいです。これらの発見がうれしくて、得意顔で知人に話したら「それをずうっと見とったん?」と、まさかの私の行動に対するあきれ顔。確かに、毎日忙しい人の反応としては当然です。私も若い頃はそうでした。そう、年を取って、ありがたいなぜいたくだなと思うのは、時間をゆっくり使えることです。

(文責 坊守)