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十二月 どすん

「あー美味しかった」「こんなご馳走はここでしか食べられへんわー」・・いったいどんなご馳走を召し上がったのでしょう。カニ?お寿司?すらっと名前の出てこないフランス料理?いえいえ、正解は「白和え」。勝林寺報恩講のおときの一場面です。この白和え、かなり地味な料理です。しかし、味たるや、えもいわれぬ美味しさ!ほかのどのお料理にもない深い味わい。その所以は、手の込んだ料理法にあると私は思います。たいていの料理は、焼く、煮る、炒める、蒸す、揚げる、和えるなど料理法を二つ三つ組み合わせてできます。しかし、白和えは、材料それぞれ違う工程をたどり、最後にさまざまな調味料の特性を微妙に調整しながら和えていくのです。大根、人参は、細かい千切りにして塩を振り、水気を適度に絞ります。ほうれん草は、柔らかすぎないように茹でます。こんにゃくは、湯煮をして細かく切って、さらに鍋で炒って水分をとばします。豆腐は、熱湯をくぐらせてからざるでしっかりと水を切り、さらに布巾で絞ります。ゴマは、フライパンで炒って香りを出し、すり鉢でしっかり油が出るまで擦ります。さあ、これでやっと下ごしらえ完了!(ふーっ)擦ったゴマの中に絞った豆腐を入れ、すりこ木でさらに擦ります。豆腐とゴマがよくなじんだところに材料と調味料を入れて和え、何人もの味見を経て完成!豆腐の絞り加減、材料の切り方絞り方、もちろん調味料の加減で、味も食感も変わってきます。現に、今年の報恩講の白和えの味や食感も、一日目と二日目では微妙に違っていて、二日とも頂いた寺族は、「一日目が美味しかった、いや二日目が美味しかった」と勝手な事を言っておりました。こんな手の込んだ料理は私には到底できません。一年に一度、報恩講で食べダメをします(笑)来年は、皆さんもぜひどうぞ。(文責 坊守)