珍しく遠出することが続きました。最初に訪れたのは、多くの人と物が行きかう大都会。人とぶつからないように歩くのにひと苦労。通りに面したcaféでは、みんなテーブルにタブレットを広げて、思い思いにお仕事かな、勉強かな。隣のお店は、平日の昼下がりにもかかわらず、ほぼ満席。どの席からも、賑やかな話し声と楽しそうな笑い声が窓越しでも聞こえてきそう。木陰にある木製のベンチでは、居眠りする初老の男性の横でテイクアウトしたハンバーガーを美味しそうに食べる男女の二人組。(自由だなぁ)私も勇気を出して、美味しそうでつい買ってしまったパンを、青空のもとで口いっぱいにほおばり、ほっとひと息つきました。次に訪れたのは、空き家や空き地の目立つ小さな漁村。聞こえるのは、波の音と鳥の鳴き声くらいでとっても静か。朝の四十分の散歩の間に、出会ったのは五人だけ。玄関先で、ほうきをもったままおしゃべりをするちょっとお年を召したご婦人二人。集会所の前の石段に座る男性は、「早くから歩いて来たんか」と声をかけてくれました。みんな私より年上の人でしたが、登校中の小学生を一人だけ見つけて、何故かちょっと安心。浜が狭く、そそり立つ急な斜面に様々な工夫をして建てられた家々は、ずっと階段でつながり、歳を取ったら住みづらいだろうと思ったけど、ここに住む人にとっては、大きなお世話。この土地にしかない、独自の集落の空気感の中に暮らしがありました。そして、どの家の窓からもさえぎるものなく見える海の景色は、きっと毎日見ても飽きないだろうと想像できます。どちらの町にも、私の町にはない「人の営み」がありました。そして、そこに暮らす人にしかわからない「居心地の良さ」があることも想像できました。
(文責 坊守)