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どすん 2025-07

今年は戦後八十年の節目の年です。そのせいか例年よりも早い時期から戦争のニュースを耳にします。先日は、沖縄戦から八十年の記事を新聞で見つけました。それは、沖縄戦で亡くなられた約二十四万人の方のお名前を一人一人読み上げて、国内外の六千人でリレーするというものでした。六月一日から始めて「慰霊の日」の六月二十三日までかかり、一人の読み手が約四百人の名前を読むことになるようです。二十四万人という人数の途方もない多さが想像されます。多くの記事から、なぜこの記事に目が留まったかというと、私も勝林寺の戦没者追悼法要で、毎年、亡くなられた百九名の名前を読み上げる役目をさせていただいているからです。戦地に赴き犠牲となられた方、開拓団として満州にわたり犠牲となられた方、その中には明らかに家族と思われる名前の連なりがいくつもあります。一人の名前を読むのはほんのわずかな時間ですが、そのわずかな時間に「どんな方だったんだろう」「どんな思いでおられたのだろう」と会うことのかなわない先人を想像します。絶望という言葉を想起します。平和な時代に生きながら不満ばかりを募らせる自身の身勝手さを思います。さて、何十年も戦争犠牲者のお名前を読み上げている私に、実は、抱えている大きな不安があります。それは「名前の読み方を間違えていないか」ということです。ご門徒の戦争犠牲者を調べて名簿を作り、勝林寺戦没者追悼法要を始めたのは前住職です。前住なら名前は勿論、顔や姿も知っていたかもしれません。しかし、その役が自分に回ってくるなど思っていなかった私は、きちんと読み方を引き継いでいませんでした・・・不安を隠して今年も、一人一人のお名前を大切に読み上げさせていただきます。

(文責 坊守)