九月住職法語

読み上げ

譬如日光覆雲霧  雲霧之下明無闇
獲信見敬大慶喜  即横超截五悪趣

イングリッシュ・セッターのカールも三歳を過ぎ、やっと少し落ち着いてお姉さんぽくなってきたように思います。しかし、早朝に裏の城山公園を散歩していると、いきなり走り出し、フリスビー犬のように勢いよくジャンプしてパクッと飛んで逃げようとするアブラゼミを取り、バリバリと食べてしまいます。大概のことは私の“やめ!!”の命令に従う良い娘なのですが、“これだけはやめられまへんな・・”と、言うことを聞きません。悪趣味です。

かくいう私も先日、オリンパスOM-1という三十五ミリフィルムカメラをパクリと買い取ってしまいました。一枚の写真を撮るのにフィルムを入れて、“ちょっと動くなよ。ハイ、チーズ。パシャ!”と撮って、写真屋さんにもっていって現像してもらい、三日後に取りに行ったら、ピンぼけだった。というような時代のカメラです。すでに、一秒十枚連写のデジタルミラーレスを使っていますので、実際にフィルムを入れて写真を撮ってみようとは思いませんが・・。でも今、かなり困難かもしれないけれど、フィルムをどこかで探し求めて、入れてみたいという欲求がふつふつとわいてきています。アブラゼミをバリバリ食べるほどではないにしろ、悪趣味かもしれません。“悪性さらに止め難し”と親鸞聖人が嘆かれたほどの深刻なことでもないと思いますが、子供のころから引きずる趣味は捨てがたいものがいくつもあります。

NHKのBSプレミアムの番組に「まいにち 養老先生、ときどきまる」があります。これは解剖学者養老孟司さんが鎌倉の私邸で愛猫「まる」と過ごす静かな時間の中で、いろいろな人生の知恵が話されているお気に入りの番組でした。しかし、愛猫「まる」が昨年暮れに十八歳(人間の年齢に換算すると九十歳前後になるのだそうです)で死んでしまい、番組名も「まいにち養老先生、ときどき…2021 夏」という名前になって先日新たに放送されていました。養老孟司さんは小さいころから虫取りが大好きな少年だったそうで、解剖学者としての根っこはそこにあるようです。というか、今も少年のころと同じように虫を取り、瓶に入れて持って帰り、足を広げて背中にピンを突き刺して標本をつくり、観察することを続けておられるようです。ちらりと映っていた先生の標本室には数限りない虫たちの死骸が、きれいに箱に収められ並べてありました。「まる」もいなくなって一人その部屋に座っていると、大切な研究も悪趣味に思えたのかもしれません。今年の六月四日の「虫の日」には、近くのお寺で虫の供養のために法要をひらかれたのだそうです。

大好きなセミ。大好きなカメラ。大好きな虫。人それぞれに他人から悪口を言われても、走り回って取りたい趣味は楽しいものです。しかし、そのままセミ地獄に落ちてしまっては大変です。最後には阿弥陀様が横ざまに悪趣を断ってくださいます。でも、「即」だから今すぐなのかな?それはちょっと困る気がするのですが・・・。    (文責 住職)

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