二月住職法語

読み上げ

覩見諸仏浄土因 国土人天之善悪
建立無上殊勝願 超発希有大弘誓

人の暮らしているこの世界、この地球の上には「国」というものがあります。世界には196もの国があるそうで、それに加えて未承認のものもいくつかあるようです。国があるということはそこに境があり、国民がいて国家がある。どの国が良くてどの国が悪いのか、できれば一番良い国に誰もが暮らしたいものですが、国境を超えることはそう簡単なことではありません。実際に大きな壁を作って人の行き来を拒んでみたり、海や川に隔てられて守ってみたりしますが、いつもその境の線をめぐって主張がぶつかり合い、戦争の火種となってきました。近年では、情報通信技術の発達とともに国の境の意味が薄れ、それがまた複雑な社会混乱を招いているようです。

浄土真宗の門徒は親鸞聖人のみ教えのもとに、「仏説無量寿経(大経)」を根本の経典として念仏の道を歩んでいきます。この大経には阿弥陀様の四十八の願が誓われており、その中でも第十八番目の願いが念仏往生の誓われた「本願」として、私たちの信心のかなめとなるものです。ただ、ほかの願も阿弥陀様の切なる願いであり、第一願から第十一願までは「人土成就の願」といわれ、自分の作る国の社会はこんな風でいたいという、国家建立の理念が誓われています。自由で、平等で、便利な真実の国です。すなわち、その国の中の「土」と「人」と「天」とがほかの国と比べ物にならず、浄であり、楽である極楽浄土の国の建立を誓われているのです。この浄土を願い、念仏して仏様の国に生まれさせていただくのが私たち念仏者です。しかし、私たちが今現実に生きている世界は、アメリカも、中国も、そして日本も、「土」も「人」も「天」も汚れた五濁悪世悪世界で、理想の社会はどこにもありません。そのことをつい忘れながら、私たちは日々の生活を送ってきているのではないでしょうか。

新型コロナウイルスがこの社会にあらわれて一年が過ぎました。世界中、国境封鎖の甲斐もなく国の境目なく広がり、今なお終息の目途がつきません。そしてこの分断は国ばかりでなく、人と人との生活の中でも深まり、いよいよ仏教の教えの基本である四苦八苦が日常の生活の中に顕在化してきているようです。

四苦八苦とは、仏教における苦の分類です。根本的な苦を生・老・病・死の四苦とし、加えて、愛別離苦(あいべつりく)- 愛する者と別離すること・怨憎会苦(おんぞうえく)- 怨み憎んでいる者に会うこと・求不得苦(ぐふとくく)- 求める物が得られないこと・五蘊盛苦(ごうんじょうく)- 五蘊(人間の肉体と精神)が思うがままにならないこと、の四つの苦を合わせて八苦と呼びます。

人はこれからも知恵を絞り、科学・医療を発達させ、政治・社会を変革しながら未来に進んでいかなければなりません。その進む方向は今急速に転換しないといけなくなっています。阿弥陀様の建てられた国をモデルとして少しでも理想にこの国を近づければと思うのですが、やはり今生の苦はなくすことはできません。やはり私たちは念仏の中で、阿弥陀様の建てられた国に生まれることを待たなければなりません。

(文責 住職) 

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