十月住職法語

解光雲無碍如虚空  一切の有碍にさはりなし
光沢かぶらぬものぞなき  難思議を帰命せよ

近年、お城がブームになっているようです。NHKの大河ドラマ、“麒麟がくる”が再開し、明智光秀のお城ということで福知山城が賑わっているようですし、出石城も数年前に日本の名城続100選に登録され、頂上の石垣の姿が誇らしげです。竹田城は「天空の城」として脚光を浴びました。ちょうどその頃から“ドローン”という変な名前の無人飛行機械が普及し、空高くから地上を見下ろす映像が簡単に撮れるようになりました。いわゆる鳥瞰図(ちょうかんずー地図の技法および図法の一種で、上空から斜めに見下ろしたような形式のものをいう。 飛ぶ鳥の目からみたように見える、というのが鳥瞰の語義。 建物や山などが立体的に描かれる。俯瞰図、パノラマ図ともいう。)がリアルな映像としてお手軽に撮れるようになったことが、お城ブームの一因となったようです。広い空を飛ぶ鳥は、視界を妨げられることなく世界を見渡します。それに比べて、私たちの毎日は地面をはいつくばって生きる毛虫の目でしか周りを見ることができません。目の前の石ころやヌカルミ、建物などに目を遮られ、右往左往して広い世界を見渡せません。にもかかわらず、名城を築いた城主は、ドローンなどないその昔に、高い空の上から地上を俯瞰し、攻めにも守りにも適した絶好の場所を定めていることに驚嘆させられるとともに、ブームは必然と思えます。

時代は進歩し現代の科学技術は今まで一般の私たちには見えなかったものをどんどんと可視化し、ひと昔前は見ることのできなかったものを誰でも簡単に見ることができるようにしてくれています。何万キロも離れて暮らす家族が、国の境に妨げられることなく、自由に笑顔で会話できますし、Googleを使えば地球の外に飛び出して台風の動きを観察できます。コンピューター画面の奥に広がる宇宙は果てしなく、人類の想像を絶する未知の世界を無限に遮られることなく自由に探査飛行させてくれるようです。しかし一旦パソコンの電源を切って現実を見ると、口にはマスク、顔にはフェイスシールド、目の前にはアクリル板で人と人とが遮られた外出自粛の不自由な世界です。コロナウイルスの蔓延する世界は今、防御と監視、統制と管理に束縛された碍(さまたげ)に満ちた世界です。

私たちの世の中は、そしてその人生は碍(さまたげ)に阻まれてばかりで、いくら科学技術が進んでも一歩もまっすぐに進めない不自由な人生です。その社会が作り出す技術も願いも思想も政治も、太陽の光さえもさまたげられ、まっすぐ進むことができない不自由なものです。そんなこの世(娑婆世界)にあって阿弥陀仏の光明(願い)はどんな障碍にも妨げられることなく届けられる、この世のものでない光なのです。どんなにかたくなな心で阿弥陀さまの願いを拒否しようとしても、その防衛心を通り抜けて私に心に至りとどく不思議な光なのです。だから無駄な抵抗はやめてナムアミダブツを称えましょう。

コロナウイルスが一切の有碍にさわりなく私たちに襲いかかってきたら大変ですが、コロナウイルスはこの世のものです。適切に防御しましょう。 (文責 住職)

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