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七月どすん

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私の住む町では、ペットボトルの収集は月に一回しかありません。もしも、出すのを忘れると一か月間ペットボトルの入ったゴミ袋と共生しなくてはなりません。だから、前日に用意をして、朝は散歩に出る前に玄関まで出して、ちゃんと準備は整えていたのです。生ごみは、早く出すとカラスの餌食になるので時間ギリギリに出しますが、ペットボトルはそんなことはないので、七時半ごろ出勤する若院に「行ってらっしゃい」に「出しといて」を加えればすべて完了―のはずだったのですが、「行ってらっしゃい」しか言わなかった。(と、あとで気付いた)でも、今までにも何回も頼んでいるのだからきっと出していてくれるだろうと思っていた。甘かった。朝ドラを見て、あさイチを少し見たあたりで、玄関を見に行ったら、私が置いたそのままの位置にそれはあった。「なんで―」「普通出すやろー」と心の中で悪態をつく。怒りのぶつけ先がないので、戸を荒々しく締めてみる。どんな言葉でこの腹立ちを伝えようかといろいろ考える。「なんで出してくれないの」とか「言わなくてもわかるやろー」・・でも、時間がたつと気持ちはおさまるし、忘れるし、どうでもよくなった。そして、(私は何に腹を立てていたのだろう)と考える余裕さえ生まれてくる。若院はなにもしていない。ただ、私の描いたストーリーのとおりにことが進まなかっただけのことだ。もしも、あの時、目の前に若院がいたら、きっと私は、身勝手な言葉を嫌味たっぷりに「私の言ってることが絶対に正しい」とばかりにぶつけていたことでしょう。居なくてよかった(笑)。おかげで、今朝も、若院は機嫌よく出勤していきました。私の言葉の中には、言わなくていいことがたくさんあると知りました。 (文責 坊守)