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五月どすん

前住職(以下、前住)七回忌、前坊守三三回忌法要をご縁のあった多くの皆様のお参りによって厳かににぎやかにお勤めすることができました。ありがとうございました。多くの月日が流れても、本堂でお経を唱えれば、皆さんに在りし日の二人の姿をすっと目に浮かべていただけることをとてもありがたく思いました。法要が始まるまでの私は、思い出に浸るというより、そこに至るまでの段取りが気になったり、お参りの方の席が気になったりして心落ち着かない状態でした。でも、親戚のご住職様たちが唱えてくださる「三奉請」が始まった時、はっきりと前住の姿を思い出すことができました。元気だった頃の前住は、勝林寺の法要の時には必ず余間に座り、誰よりも大きな声で読経し、しかも、まるで周りをリードするかのようにほんの少し早く声を出すのが常でした。先日の法要で、たまたま誰かがほんの少し早く声を出されたのです。その一秒で、前住の思い出がよみがえりました。「そうそう、おじいちゃんもいつも人より早く声を出しとんなったなー」に始まって「私が出かけると、必ず何回も電話で「何時に帰る?」と聞かれたなー」「私を「お母さん」と呼び、何でもよく相談されたなー」・・なのに私はいつも素っ気なかった「もっと優しくしてあげたらよかった」「もっとちゃんと話を聞いてあげたらよかった」・・次第に視界がぼやけてきました。ずっと目立たず人に合わせることがいいと思ってきましたが、もしも前住がそうであったら、私は法要中に前住を思い出さないままだったかもしれません。人とほんの少し違うことは、人の心に残るには大切なことなのですね。「目立つところがない」が自慢だった私ですが、これからは「ちょっと人と違う」を目指します。(笑)(文責 坊守)