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一月住職法語

行者正受金剛心 慶喜一念相応後
与韋提等獲三忍 即証法性之常楽

 明けましておめでとうございます。

昨年秋より工事に入り、お正月を前にして勝林寺本堂の裏面及び西壁の改修工事が完成いたしました。勝林寺のある地域は国の伝統的建造物保存地区にあり、勝林寺本堂及び庫裏もその伝統的建造物としての指定を受けています。

この本堂は明治四十年に建造されており、裏の壁面は戦後急場しのぎでトタンの波板が張られたままになっていました。これまでは出石高校の生徒が通学のときに見るくらいで、さほど気にもならなかったのですが、最近観光客の足並みが駐車場からお城山に流れるときに本堂の裏がよく見えるようになってきました。そこで、補助金もいただく中で、思い切って大改修工事に踏み切りました。裏面は焼き杉板、西側面は杉板雨戸、縁の下は開閉式の格子板で囲っていただき、犬走も柱の補強も兼ねてスッキリと整備が完了しました。

暮れに勝林寺門徒で高齢順位第二位(97才)の藤川貴恵さんがお参りに来られ、ちょうど出来上がった本堂を見て大変喜んでいただきました。正面からは全く見えない工事ですが、車いすでも通れるようになりましたので、皆さんもお参りの時にちょっと裏に回ってみてください。

 私たち親鸞聖人の教えに学ぶ念仏の行者にとって、ただただ念仏一つと、よろこぶ心の大切さは要となるところです。新しい年が来ればまた一つ歳をとり、身体が衰え、多くの別れが増え、悲しいニュースに心を痛めながら、五濁悪世悪世界をますます実感していく近年です。それでも、時の流れの中でまた新しい年に出会えたことをよろこべるように育てていただいているのです。日常勤行聖典の最初に「礼讃文(らいさんもん)」が挙げられています。それは「人身受けがたし、今すでに受く。仏法聞きがたし、今すでに聞く。」と始まります。人の身として産まれ出ることは難しい。それにも増して、この人生の中で、仏の願いを聞きとどけさせていただいたことはなお難しい。念仏行者の実感です。だから弥陀の本願に感謝し、お念仏を喜びとしてお寺参りを重ねていただく多くの御同朋の支えに感謝し、今年もまた死んでいかなければならないわが身が辛く悲しく、寂しい人生であっても、“あけましておめでとう”と喜べるのです。

(文責 住職)