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住職法語 2024-08

摂取心光常照護  已能雖破無明闇
貪愛瞋憎之雲霧  常覆真実信心天

 年々夏の暑さが厳しさを増し、「命に危険のある暑さ」がすっかり日本の夏に定着してしまいました。私は八月生まれのせいか、寒いよりは暑い方がイイ派なのですが、さすがに体温を超える暑さには参ってしまいます。

 お釈迦様が修行された二千五百年前のインドも暑かったようです。普段はインド各地を歩き回り、説法したり修行したりされていたお釈迦様でしたが、暑くてそして雨の多く降るこの時期は、今の日本と同じように草木が生え繁り、昆虫、蛇など数多くの小動物が活動するため、遊行(外での修行)をやめて一か所に定住することで、小動物に対する無用な殺生を防ぎ、みんなで座ってお勉強することにされていたそうです。これが「安居(あんご)」という習慣になって日本にも伝わり、今でも西本願寺では、毎年夏に二週間安居という勉強会が開かれています。前住職は、生前よく京都まで行って安居の講義に参加していました。私たちもこの炎天下では無理せず、不要不急の外出は避け、クーラーを惜しまず使って、勉強はせずとも、今年はオリンピック観戦でもしながら、厳しい夏を乗り切っていきたいものです。

 さて、今月のお正信偈の四句は

「阿弥陀様の 一切衆生を 救わんと願う 摂取不捨の心は 光のごとく 常に 私たちを照らし 護りたもう このことによって すでに 無明の闇は よく 破られている

しかし むさぼり 愛に埋もれ いかりに狂い にくしみあう 我が心は まるでたちこめる雲や 深い霧のように 常に 真実信心の 晴れやかな 天の大空を 覆い隠してしまっている」

というような感じで読み聞かせていただいています。私たちの生活の中でも、“常に”という言葉はよく使われる言葉です。常に健康でいたい、常に穏やかでいたい、常に平和な世界であってほしいと常々思うことです。近年社会状況の変化も激しく、日々の生活にも不安なことが多くなってくる中で、今日と同じ明日が続くことがとてもうれしく思われます。しかし、そうばかりにはいきません。そして常に私を守ってくれていた父母、常に私を導いてくれた先生、常に私を支えてくれたご門徒、常に私を楽しませてくれた友人、ずっと傍に居てほしかったですが、みんな先に逝ってしまわれました。私たちの世界は無常であるというのはこういうことなのでしょう。しかし、この四句の中にでてくる“常に”は、私たちの世界を超えた仏の世界の働きです。私たちの世界では絶え絶えになってしまう願い、別れ別れになってしまう大切な人々が、この世を超えた仏の願いとなって“常に”私を照らし、護っていただいているのだとうたわれているのです。

 私が人生の中で出会った“常に”あってもらいたいものが次々に消え去って行っても、お念仏の中により一層、常に私を護り導き支えられていることが確かに感じとられるのです。 

(文責 住職)