寺の二大法要の一つ永代経法要の時期になりました。ちなみにもう一つは、十一月にお勤めする報恩講法要です。この二つの法要は、町内のお寺のご住職様に出勤していただきますので、ほかの法要とは違う緊張感が坊守にはあります。コロナによってこの三年間はお参りし合うことを遠慮していましたから、久しぶりに接待させていただきます。何でおもてなしをしようかと今からいろいろ思案しています。ご住職を接待するときには、普段とは違う特別な器や小物を使います。前坊守の時から、それらは大切に扱われてきましたから、私もそれに倣い、どれも大事に使い続けています。コップを一つ、私の不注意で割ってしまいましたが、それ以外は一つも欠けることなく使ってきました。その中のひとつに「おしぼり」もあります。「えーっ!おしぼり?」と思われるかもしれませんが、一年に二回しか使わないのですから、使った後、きちんとしまってさえおけば、ちょっと色落ちはありますが、ほつれたり破れたりすることもなく三十年以上も使ってこれました(笑)でも、さすがに数年前から、このおしぼりの存在がひどく気になりだしました。(これは、買い替えてもいいんじゃないだろうか)と。私は、なぜ長い間買い替えに踏み切れなかったのだろうと思います。坊守を引き継いだ時「どんな小さなことでも、前坊守がしてきたことを、できるかぎり変えることなく受け継ぎ、そのままに次へ引き継ぎたい」という一心でした。そんな私にとって、前坊守と同じものを使うということが、一番簡単にできる継承であり、前坊守に近づく方法だったのだと思います。そして、それは間違いではなかったと思えます。さて、今年は思い切っておしぼりを買い替えて、心をこめてお接待をします。 (文責 坊守)