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九月どすん

このあたりでは、毎年八月二十三日は地蔵盆です。お地蔵さんは、子どもたちを守ってくださる存在と言われていますので、たった六件の小さな内町区ですが、大切な行事として続けてきています。とはいえすっかり子どもたちが少なくなってしまった(中学生以下は一人)ので、大人が頑張ります。朝八時に地区のみんなで集まり、飾りつけからスタートします。勝林寺の本堂の階段が、お地蔵さんの祭壇になるのです。まずは、階段に赤い毛氈を敷き、その上にきらきら光る打敷をかけます。そして、数年前に亡くなられた地区のおばちゃんが縫ってくださった小さな座布団を二重に重ねた上に、対のお地蔵さんに座っていただきます。後ろには、やはり赤い幕と地蔵尊幕をたらします。お供えは、たくさんのお花、バナナ、あんぱんにお菓子と決まっています。上から提灯をぶら下げたら完成です。お地蔵さんには本当に赤がよく似合います。提灯に火のともる夕方から、子どもたちのお参りが始まります。お賽銭を入れたかわいいお財布を首からかけて、お参りのご褒美を入れる大きな袋を持った子どもたちが、次々にお参りに来ます。みんなとてもお行儀がいいです。今年は、みんなでお勤めを終えた直後に激しい雷雨となってしまったので、早めに片づけることとなりました。片付けを手伝っていた若院と娘が急に声をあげて盛り上がります。「わあ、二〇〇〇年の新聞だ」「こっちは一九八八年、ぼくまだ生まれてないで」―なんと、提灯を包んでいたのは三五年も前の新聞でした。そうだよ、あなたたちが生まれるよりずっとずっと前から続いてきている地区の大切な行事なんだよ、と思いながら、新しいのはいくらでもあるのに、また三五年前の新聞に提灯を包んで仕舞いました。

(文責 坊守)